学会の症例発表をすることになった
珍しい疾患の症例を経て、学会で発表をすることになった。そのような際にはどのような気持ちで症例発表に臨めばいいのでしょう。
症例発表がまだ数回しか経験のない先生方の発表がグダグダにならないための覚えておくと役に立つようなコツについてみていきましょう。
プレゼンは結論が大事
話の流れとして有名な「起承転結」という言葉がありますが、学会発表でこれをやるとひんしゅくを買うことになるでしょう。
なぜなら学会でのプレゼンは必要な情報を5−7分程度の短い時間で端的に伝える場所だからです。物語のようにどうなるかハラハラしたり、ワクワクするのが目的ではなく「結局私はこれが伝えたいのです」というものを確実に伝える必要があります。
ということでプレゼンテーションを作る時に最初に考えるのは結語です。
たとえば「銅欠乏性貧血」を診察したとしてこれをプレゼンしたい時に「銅が欠乏して貧血になることが有るから気をつけましょう」という結語にするか、「貧血の中で血小板が減らないものの中に銅欠乏性貧血があるから血小板が減らない貧血見たら想起しましょう」というのにするか、はたまた「胃を摘出してる人や中心静脈栄養が長い人の貧血には銅欠乏を想起しましょう」という結語にするかで、発表の意味合いはだいぶ変わってきます。
結語をしっかりと設定するとどのようなデータを提示してどのような流れで話を構築するかが見えてきます。プレゼンを作ろうとする前にまず結語は何にするか考えてみることが大事だと思います。
伝えるポイントは2−3個まで
たとえば「銅欠乏性貧血」をプレゼンしたいときに、患者の経過を細かく説明し、銅欠乏性貧血の疾患概念、疫学、臨床像、リスクファクター、治療を説明して、結語に行く
こんなふうに初めてのプレゼンテーションでは漏れのないように情報を入れようとしがちです。
わかってもらいたいという気持ちは非常によく伝わるのですが、5−7分でこれをやろうとすると、オーディエンスの前に文字だらけのスライドを提示して何を喋ってるかいまいち聞き取りにくい早口で必死にプレゼンをする、というようなことになってしまいます。
結語を決めたらそれに必要な情報を2−3点に絞ってプレゼンするといいと思います。
例えば「胃を摘出してる人や中心静脈栄養が長い人の貧血には銅欠乏を想起しましょう」という結語を選んだら、患者の臨床経過と銅欠乏の概念とリスクファクターを示せば言いたいことは伝わります。他の情報はプレゼンが終わった後にオーディエンスから質問が来るので思い切って省くことも重要です。
スライドに頼らないプレゼン
喋る内容を全部スライドに書いておけばそれを見れば話ができる
こういう考えでスライドを作ると情報が錯綜するビジーなスライドが出来上がります。
基本的にスライドに乗せる情報は必要最低限にするといいと思います。スライドはあくまで補助で、主役は発表者なのです。
発表者のはなしを聞くためのちょっとした助けとなるのがスライドです。
スライドを見るのに必死で発表者の話が頭に入らないということにならないようにするといいと思います。
おすすめの本
はじめての学会発表 症例報告―レジデントがはじめて学会で症例報告をするための8scene
はじめての学会発表 症例報告―レジデントがはじめて学会で症例報告をするための8scene
発表を進められてからのリアルな流れが記載されていて、発表までのイメージが掴めます。
また抄録の書き方についても丁寧にレクチャーされていて、はじめに手に取る本として最適です。
レジデントのためのスライドのポイント―伝えるためのプレゼンスキル
レジデントのためのスライドのポイント―伝えるためのプレゼンスキル
スライドの作り方については「レジデントのためのスライドのポイント―伝えるためのプレゼンスキル」という本が詳しいです。ここに書いてあることを実践すれば、少なくとも見ていて苦痛なスライドにはならないと思われます。
まとめリンク
はじめての学会発表 症例報告―レジデントがはじめて学会で症例報告をするための8scene
レジデントのためのスライドのポイント―伝えるためのプレゼンスキル
まとめ
学会での症例報告発表が近い方には是非ご覧いただきたい内容です。
今後も読者の方々にお役に立てるような記事を配信して参ります。
コメント