怒りをコントロールする医療現場で重要なスキル「アンガーマネジメント」
内科医として病院で働いているといろいろな人の感情に触れる機会があります。
患者さんやその家族からの感謝の気持やねぎらいの気持ちなどプラスの感情もあれば、病気の苦しみや、なかなか治らないことへのいらだちや悲しみといったマイナスの感情もあります。
病院という場所は病める人が多く集まるので普段よりマイナスの感情をいだきやすい状況になっています。そんな中でマイナスの感情が私達医師に向くことが避けられない状況も経験するでしょう。
自分のマイナスの感情をコントロールすることは非常に重要なスキルです。
今回は怒りをコントロールする技術であるアンガーマネジメントについて見ていきたいと思います。
アンガーマネジメントとは
そもそもアンガーマネージメントとはなんでしょうか。
アンガーマネジメントとは怒りやイラつきといった感情をコントロールする技法のことです。怒りを生じにくくするような方法論も一部含まれますが、どちらかというと怒りが生じた時にその怒りを上手くコントロールすることが重要です。
自分の怒りのタイプを知るアンガーマネジメント診断
怒りのコントロールをする際にはまず、自分の怒りのタイプを知ることからはじめましょう。
日本アンガーマネジメント協会からアンガーマネジメント診断というものが出ています。
アンガーマネージメント診断での簡単なアンケートに回答することで、自分の怒りのタイプを知ることができます。
また、それだけでなく自分が過去に怒りを覚えたときの状況を思い返して、どのような時に自分が怒るのかを冷静に分析しましょう。
これだけで自分が怒りを覚えた時に冷静に対応することができるようになります。
日常の怒りのコントロールの方法は?
よく言われるアンガーマネジメントの技法に「6秒ルール」と言われるものがあります。これは怒りを表明する前に6秒間待つというもので、人間の怒りのピークは6秒程度で過ぎると言われていることから提唱されたものです。
単純に6秒待つのも悪くはないですが、怒りを表明する前に「本当に怒る必要のあることなのか?」「怒ることで事態は好転しうるのか?」を考える習慣をつけると、大概の事は怒るほどのことではないということも少しずつ分かってきます。
そうなるとカッとなって失言する、ということは防ぐことができます。
とにかく反射的に怒るということを避けるのが重要です。
患者さんとの関わりの中で怒りを生じてしまう状況で多いのが自分のおもう「べき」が患者の「べき」とずれているという状況です。
例えば医師が「この人は糖尿病だから間食はゼロにすべき」と思ったとします。
その時患者は当然間食をゼロにすべきとは思っていません。今まで普通に生活してきた中で急に医師に「間食はゼロにしなさい」といわれてもピンとこないでしょう。
そんな時に医師が考える「べき」に基づいて怒りを表明すると軋轢が生じます。このように、医師の考えが正しいかどうかの前に先ずは医師と患者の「べき」がきちんとあっているか考えましょう。
これを怠るとコミュニケーションエラーが起こり、その結果、医師も患者も怒りだしてうまく診療が進まないということになるのです。
自分が考えている「べき」から外れた行動をしている人を見たらどのような背景があってそのような行動をしているのかを考える習慣をつけましょう。
怒ったあとにも重要なポイントがあります。それは怒りに任せて非合理な行動をとっていないかを自分で考えることです。
怒ったあとに、和解する方法を考えずに長時間辛く当たったり、意地になって正しくない主張を貫いたりすると人間関係を大きく損ないます。
また自分が表明した怒りの内容がきちんと伝わっているかを再度考えることも重要です。
アンガーマネージメントに関するおすすめの本
アンガーマネジメントに関する書籍は多数出ています。
アンガーマネジメント入門
入門書としておすすめなのが朝日文庫の「アンガーマネジメント入門」です。アンガーマネジメンの基本がコンパクトに纏まっています。
どんな怒りも6秒でなくなる アンガーマネジメント・超入門
この怒り 何とかして!! と思ったら読む本を再編集して作られた本であり、アンガーマネジメントについてわかりやすくまとめられているためとてもオススメできる本です。
まとめリンク
まとめ
医師は冷静な判断が求められる一方で批判や怒りなどの感情にも触れやすい職業でもあります。
しかし感謝されることも多い職業ですので、マイナスの感情をうまくコントロールできれば非常にやりがいのある楽しい仕事です。
アンガーマネジメントを身に着けて楽しく業務にあたれるといいですね。
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