はじめに
私たちが普段医師として処方する西洋薬とは異なる考え方で処方される漢方薬
うまく使うと日頃の診療の悩みに対して新たなアプローチの方法を与えてくれます。しかし、西洋役とは異なった考え方で処方される薬なので、普段の感覚と全然違うために「よくわからない」「なんとなく胡散臭い」「実際聴くの?」とネガティブな思いを持つ方もいらっしゃるかもしれません。実は漢方はエビデンスがしっかりある薬剤も多く、西洋医学のアプローチでは対応しにくい問題を解決してくれたりと診療のバリエーションを増やしてくれる薬剤でもあります。
今回はそんな漢方についてどう扱えばいいのかその具体的な事項を見ていきましょう。
漢方の処方の考え方
実は漢方を日常的に処方している医師は多く、8割程度の医師が日常的に漢方薬を処方しています。
この漢方の処方はどのような考え方で行うものなのでしょうか。
まず普段私たちが使っている西洋医学の薬剤について見てみましょう。
西洋医学の薬剤は合剤を除いて基本的に単一成分の薬になっています。
ある疾患に対してある特定の成分を用いて治療するために処方されます。
例えば高血圧なら高圧薬というような感じです。
漢方薬の処方は病名に対してではなく「証」に対して行います。
この証とは体質と症状と所見を総合した考え方のことを示します。
例えば代表的な漢方薬である葛根湯の用法は「体力中等度以上のものの次の諸症:感冒の初期(汗をかいていないもの)、鼻かぜ、鼻炎、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み」となっています。
このように漢方薬は病名に対して処方されるのではなく、体質(体力がある、ない、体が冷えやすいなど)と症状と所見を総合的にみて処方されるのです。
漢方を使う場面
漢方を使う場面としてまず考えられるのは西洋薬の補助として使うという使い方です。
西洋薬の治療に追加して患者の症状に合わせた漢方薬を使用することで治療の満足度を高めることができます。
また冷え性や下痢を起こしやすい体質などの、西洋医学的な病名がつきにくくてQOLに関わるような症状に対して体質を改める手助けに漢方を使うことで患者満足度が上がります。
不定愁訴と片付ける前に漢方薬を試してみる価値は十分にあります。西洋薬が効きにくい症状に漢方薬を使ってみると非常によく効くこともあります。
例えば、
水溶性下痢で悩んでいる患者さんにいろいろ西洋薬を試したのちに、むくみや水溶性下痢に効果のある五苓散を使ってみると非常によく効くことがあります。
例えば、
また、ICU管理中の患者さんで、下部消化管の運動が低下している人には大建中湯を使用すると効果を発揮することがあります。
漢方薬のおすすめの参考書
まずは漢方薬という薬に対する苦手意識や「得体の知れないもの」という感覚をなくすためにおすすめの本があります。
ねころんで読める漢方薬: やさしい漢方入門書 ナースと研修医が知っておきたい漢方のハナシ
メディカ出版の「ねころんで読める漢方薬: やさしい漢方入門書 ナースと研修医が知っておきたい漢方のハナシ」です。
この本はとにかく読みやすくとっつきやすいので最初に読めば漢方とは何ぞや?という疑問に優しく答えてくれます。
民間薬との違いや、症状別の処方など実践的な内容もありました。
少し割高に感じるかもしれませんが、漢方の礎が築ける内容だと思います。
基本がわかる 漢方医学講義
次に読む本としておすすめなのは、羊土社の「基本がわかる 漢方医学講義」です。
多くの漢方の専門家が参加して書かれた本書はビジュアル面でも非常に読みやすくできており、この一冊で漢方の基本はかなり理解が進む良書となっています。
漢方のことをより深めたい方にはおすすめしたい内容です。
漢方スクエア
書籍以外におすすめなのがweb サイト「漢方スクエア」です。漢方のデータベースの提供や、オンラインレッスンがあり、漢方の理解をするのに非常に役に立ちます。
とりあえず漢方についてどんなものか見てみたいという人はこのサイトのオンラインレッスンを受けるだけでも漢方への理解が深まります。
まとめリンク
まとめ
今回は漢方薬について見ていきました。
日常診療の幅を広げ患者満足度を向上させる武器になる漢方薬、処方できるようになれるといいですね。
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